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天地のはじめ [古事記解体]

「天地(あめつち)の初発(はじめ)の時、高天(たかま)の原に成りませる神の名(みな)は、天(あめ)の御中主(みなかぬし)の神、次に高御産巣日(たかみむすひ)の神、次に神産巣日(かむむすひ)の神。この三柱(みはしら)の神は、みな独神(ひとりがみ)に成りまして、身を隠したまひき」

古事記の序文はとりあえず、おいといて、冒頭はこれから始まる。
で、これから古事記をいろいろと解体してみようと思うわけだ。

まず、万世一系神話は、さよならする。
日本古来の神道、なんてー感覚も、さよならする。
なんか感覚的に違うものがあったら、「外来かな」と疑ってみる。
このへんから始めようかな。

『古事記』の世界では、縄文時代らしい話はほとんどない。
この縄文時代、日本では紀元前約一万年ぐらい前から始まるらしい。もちろん、それに先立つ旧石器時代があって、まだ大陸と地続きで、マンモスなんかがいて、人々が足を使って移動できる時代ってのがあったわけだが。
この日本列島は、ユーラシア大陸のどんづまりで、そこから先は本当に海だったから、あっちこっちから人々が渡ってきてとどまったらしい。
でも、どれをとって、「日本原住の」ということは、そもそも言えないっぽいんだよね。
旧石器人と縄文人には、大がかりな交替は見られないが、弥生人には見られる、つまり、弥生人は朝鮮半島からの渡来だった、というのは、だいたい、認められてるんじゃないかと思うんだけど、その場合、弥生人がそれ以前の縄文人を駆逐したわけではないから、縄文人と弥生人は混血していったと考えられる。

弥生人の到来は、稲作と支石墓をともなっている。これはポイントね。

ところで、古事記日本書紀にでてくるいろいろな神々について、偏見抜きで考えてみよーと思っているわけだ。
まず「天(あめ)」の、とか、「高(たか)」とか「神(かむ)」とか、頭についてるのって、あとからつけたんじゃないかなぁってこと。
「御(み)」も、そうだとすると。
なかぬし、むすひ、むすひって残るわけね。後ろふたつの「むすひ」は、そうすると対象だよねぇっと。

[むすひ][なかぬし][むすひ]
って、こんなふうにならんでるのかなー。
これが
[たか]  [あめ]  [かむ]
という感じかしら。

「次に国稚(わか)く、浮かべる脂の如くして水母(くらげ)なす漂える時に、葦牙(あしかび)のごと萌え騰(あが)る物に因りて成りませる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅(うましあしかびひこぢ)の神。次に天(あめ)の常立(とこたち)の神。この二柱の神もみな独神に成りまして、身を隠したまひき」

う~ん、四番目が、変。むっちゃ変。「うまし」は「美(うまし)」かなぁと思う。「あしかび」はもちろん、葦牙なんだろうけど、「ひこぢ」……「ひこ」は「日子」で「彦」だよね。いきなりこれだけ、万葉仮名っぽくって、印象違いすぎ。なんだこりゃ~って感じ。
これと一緒なのが、天常立神って、そりゃぁそもそもお対になってないでしょーって気がしませんかね。

最初の三人と次の二人、これらはいずれも独神(ひとりがみ)、つまりパートナーである女神がいなくって、子供もできることなく、ってことよね。そして「身を隠したまひき」……つまり死んじゃった、と。

「上の件(くだり)、五柱の神は別(こと)天(あま)つ神」
えっと、古事記の中には、天つ神と国つ神ってのがいるんだけど、そのうちの天つ神のそのまた「別(こと)」だってゆってるわけね。

「次に成りませる神の名は、国の常立の神。次に豊雲野(とよくもの)の神。この二柱の神も、独神に成りまして、身を隠したまひき」
同じだー。まぁ、「国」は「天」とか「高」とか「神」とかと同じに考えていいと思うんだけど、「豊」はどうだろうねぇ。(←実は腹案があるのだけど、それはまたあとで)とりあえず問題提起。

そしてここから、また違うんだな。
「次に成りませる神の名は、宇比地邇(うひぢに)の神。次に妹須比智邇(いもすひぢに)の神。次に角杙(つのぐひ)の神。次に妹活杙(いもいくぐひ)の神。二柱。次の意富斗能地(おほとのぢ)の神。次に妹大斗乃弁(いもおほとのべ)の神。次に於母陀流(おもだる)の神。次に妹阿夜訶志古泥(いもあやかしこね)の神。次に伊耶那岐(いざなぎ)の神。次の妹伊耶那美(いもいざなみ)の神。
 上の件(くだり)、国の常立の神より下、伊耶那美の神より前を、あわせて神世七代(かみよななよ)と称(まを)す。上の二柱は、独神はおのもおのも一代とまをす。次に双びます十神はおのもおのも二神をあわせて一代とまをす」

最後が、イザナギとイザナミなので、「妹(いも)」とついてるのは、ペアリングの女性形であることを意味する接頭語だと考えられる。
そんで、「うひぢに」より前は、一人ずつ一代で、そのあとの十人は、二人一組にしてねってことね。

で、「一代」ってゆーと、これ代々つながっているように感じるじゃないですか。
でもそうすると、イザナギ・イザナミの前は、オモダル・アヤコシコネなんだけど、この二人がイザナギとイザナミのパパとママというわけではないらしい。
しかも、イザナギとイザナミに、天から地にくだっておさめろ~、と命令したのは「天つ神」なんだけど、これが天御中主なのか、天常立なのか、説明ないのね。

それにどうも、イザナギとイザナミってのは、そもそも淡路島地付きの神様だったっぽくって、「天孫降臨」というところの「天(あめ)」族とは関係なさそうなのだ。
でも、ここで、イザナギとイザナミによって、国作りの話を展開しなくちゃぁならない何かはあったんだろーね。

ここまでの神様(イザナギとイザナミ以外)で、重要なのは「むすひ」のお二人。
「むすひ」すなわち「魂」なので、あちこちで祀られているし、このあとも言及してくる。
それ以外は、名前でているだけで、どうも判然としないわけ。
意富(おほ)なんて、古代「おほ」国のことじゃないかなぁ、とぼんやり思うわけだけど。(そうでない名前もあるので、なんとも断定はしにくいなぁ)
そして、イザナギ・イザナミまでに、なぜこういう系列を作らなくっちゃいけなかったかも謎。

ただ、何もないところから、こういう神様の名前を出してくるわけじゃなかろう。
すでにあった神様の名前を、こうやって、系図にしてみたんだよね。
そしてこの神様たちはみんな、「身を隠したまひき」で、あっさり殺されちゃっているわけだ。
こーゆー神様いたんだけど、いまはいないよ~ん、てな感じでね。

これが古事記の冒頭部分です。
こんな調子で、少しずつ読んでいければいいなぁと思います。


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根来川龍雄

 「意富(おほ)」という字に似た地域が古代出雲の国にはありました。出雲東部「意宇(おう)郡」で現在の島根県安来市辺りになります。ここには伊邪那美の神陵と伝えられている墓所があります。更に、出雲国風土記では大穴持(おほなもち)命(大国主命の別称)が越の八口(ヤマタノオロチ)を退治したと伝えられている地でもあります。
 記紀では須佐之男命の役割であるヤマタノオロチの退治物語の主人公は出雲神話では大国主命になるといった奇妙なことになっています。不思議ですね。
by 根来川龍雄 (2005-06-05 01:18) 

tenko

いらっしゃいませ~。
私はスサノオは外来神、それも新しいほうの神様であり、それより以前に、大穴持の神が出雲を支配していたと思っています。
で、スサノオ一族がやってきて、壮絶な国盗り合戦になった挙げ句、負けた大穴持の一族が全国に散らばっているのかな、と。諏訪まで逃げたのは、タケミナカタでしたっけ、タケミカズチでしたっけ、オオナムチの弟でしたよね。
出雲→越→諏訪というルートは、古代にすでに確たるものができあがっていて、諏訪からさらに関東に抜けていただろうとぼんやり考えているのです。
越の八口退治の伝説もまた、出雲が越を拠点制覇した名残なんじゃないかなぁ、なんてね。
オオナモチを頂点とする、大国というものが、かなり広範囲に(出雲から紀伊までは、少なくとも)広がっていて、そこに一方からスサノオ一族が、もう一方から天孫一族が、時差はあれども食い込んできて、そもそもスサノオ一族と天孫一族は半島でも敵対していた、というのが私の妄想であります。
そしてこの天孫一族は海人(あま)の系列だろうというのが、最近の我が家の定説になっております。
出雲神話は壮大な国引きの説話がきっちりと残っていて、ロマンを感じますね♪
by tenko (2005-07-07 13:21) 

大国魂

あの意多伎神社出土の旧石器時代のナイフはその後どうなった。あれは旧石器捏造事件とは関係ないと思うが。
by 大国魂 (2008-12-21 19:19) 

愛知人

 安来といえば特殊鋼が名産。中核企業の日立金属は刃物鋼でもとくに切れ味が要求されるカミソリにおいて世界シェアーの6割を超えているらしい。歴史的な街に先端技術を誇る工場があるなどとは、妙に面白い。
by 愛知人 (2009-02-11 19:31) 

プレス技術屋

 島根県安来市に巨大な工場を構える日立金属が開発した新型冷間工具鋼 SLD-MAGIC(S-MAGIC)は微量な有機物の表面吸着により、金属では不可能といわれていた自己潤滑性能を実現した。この有機物の種類は広範囲で生物系から鉱物油に至る広い範囲で駆動するトライボケミカル反応を誘導する合金設計となっている。潤滑機械の設計思想を根本から変える革命的先端材料というものもある。
 このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度にはインパクトがある。

by プレス技術屋 (2013-01-03 23:15) 

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